賃貸不動産の相続税評価が変わる!自社株・事業承継の最新動向もやさしく解説

2026年度 税制改正シリーズ

賃貸不動産の相続税評価が変わる!
自社株・事業承継の最新動向もやさしく解説

2026年7月時点の公表情報にもとづく解説記事です

この記事で分かること

  • 賃貸アパート・マンションの相続税評価が2027年1月から厳しくなること
  • 会社の株式(自社株)の評価方法も、62年ぶりに見直しが検討されていること
  • 事業承継税制の「計画書」の提出期限が延びたこと(ただし本番の期限は変わらないこと)

目次

1. 賃貸不動産の相続税評価が厳しくなります(2027年1月1日〜)

今回の税制改正で最も影響が大きいのが、「亡くなる前の5年以内に買ったり建てたりした賃貸不動産」の評価方法の見直しです。財務省が公表した「令和8年度税制改正の大綱」に、次のように書かれています。

「被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」
(注)取得価額をもとに地価変動等を考慮した金額の100分の80(=80%)に相当する金額で評価できることとする。
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」二資産課税3その他(4)

かんたんに言うと、「亡くなる直前に賃貸物件を買って相続税評価額を下げる」という節税策が使いにくくなる、ということです。今までは、路線価や固定資産税評価額をもとに評価するため、実際に払った金額(時価)よりかなり低い評価額になるケースがありました。改正後は、直近5年以内に取得した物件については、実際の取引価格に近い金額(取得価額をベースに80%程度)で評価されることになります。

現行(〜2026年12月まで) 改正後(2027年1月〜)
評価の基準 路線価・固定資産税評価額 取得価額ベース(時価の80%目安)
対象 すべての賃貸不動産 相続開始前5年以内に取得・新築したもの
評価減の効果 大きい(時価の3〜5割程度まで下がることも) 小さい(時価に近づく)

※小口化された不動産特定共同事業契約・信託受益権の形をとる貸付用不動産は、取得時期を問わず改正後の評価方法が適用されます。

かんたんシミュレーション(イメージ)

※以下は制度の考え方を理解していただくための簡略化した仮の数字です。実際の評価額は個々の物件や取得時期により異なります。

例)4年前に1億円で購入した賃貸アパートを相続した場合

現行の評価額
約5,000万円(目安)
改正後の評価額
約8,000万円(目安)

評価額が上がる分、相続税の課税対象となる財産も増えることになります。

2. 会社の株式(自社株)の評価方法も、62年ぶりに見直しへ

2026年4月、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げ、非上場会社の株式(いわゆる自社株)の評価方法を見直す検討を始めました。国税庁が公表した会議資料には、次のようなデータが示されています。

類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の約26.1〜27.2%。会社の規模が大きいほど、評価額が相対的に低く算定される傾向がある。
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(2026年4月20日)

非上場会社のオーナー経営者にとって、自社株の評価額は事業承継の際の贈与税・相続税に直結します。現行の「類似業種比準方式」は、会社の規模が大きくなるほど評価額が低くなりやすいという偏りが会計検査院から指摘されており、これが見直しの背景です。

注意:この見直しはまだ検討段階であり、施行時期は確定していません。早ければ令和9年度(2027年度)税制改正での法制化が見込まれていますが、現時点では「未定」です。当事務所でも有識者会議の議論を継続的に確認してまいります。

3. 事業承継税制「特例承継計画」の提出期限が延長されました

自社株の贈与・相続にかかる税金を猶予してもらえる「事業承継税制(特例措置)」を使うには、あらかじめ「特例承継計画」を都道府県に提出しておく必要があります。この提出期限が、令和8年度税制改正で延長されました。

計画書の提出期限 実際の贈与・相続の期限(変更なし)
法人版 令和8年3月31日 → 令和9年9月30日 令和9年12月31日
個人版 令和8年3月31日 → 令和10年9月30日 令和10年12月31日

出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」二資産課税2租税特別措置等

ポイント:「計画書を出す期限」が延びただけで、「実際に株式を贈与・相続する期限」は延びていません。計画提出を後回しにしすぎると、いざという時に間に合わなくなる可能性があるため、早めの準備が安心です。

今できる対策

不動産オーナーの方へ

2027年1月以降、直近5年以内に取得・新築した賃貸物件の評価額が上がります。相続対策として不動産購入を検討中の方は、取得時期や評価方法の変化を踏まえて計画を見直しましょう。すでに保有中の物件についても、評価額への影響を試算しておくことをおすすめします。

中堅企業の経営者の方へ

自社株の評価方法は将来変わる可能性があります。現時点の評価額で事業承継を進めるかどうか、有識者会議の動向も踏まえて検討する価値があります。

事業承継をお考えの方へ

「特例承継計画」の提出期限は延びましたが、実際の贈与・相続の期限(法人版:令和9年12月31日、個人版:令和10年12月31日)は変わりません。計画提出はお早めに進めましょう。

今回ご紹介した内容は、いずれも制度の詳細や個々の状況によって適用可否が変わります。

出典(官公庁公式情報)

本記事は2026年7月29日時点で公表されている情報にもとづいて作成しています。今後の国会審議・通達改正等により内容が変更となる可能性があります。

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