親の土地をタダで借りて家を建てたら?
「使用貸借」の相続税・贈与税のルール
この記事は、国税庁が公表している通達「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(最終改正:令和8年8月31日)をもとに、基本のルールをやさしく説明したものです。
1. まず結論から
・親の土地を地代なしで借りて子が家を建てても、子が「土地を借りる権利」をもらったことにはなりません。その権利の価値はゼロとして扱われます。
・そのかわり、親が亡くなって子がその土地を相続するときは、土地は「人に貸していない土地」と同じ評価になります。貸している土地のような評価の引下げはありません。
・固定資産税くらいのお金を親に払っていても、原則として「タダで借りている(使用貸借)」の扱いです。
2. 「使用貸借」とは?
「使用貸借(しようたいしゃく)」とは、お金を払わずに物を借りることです。家族のあいだでよくあるのが、親の土地に子どもが自宅を建てるケースです。
ふつう、他人の土地を借りて家を建てるときは、地主に権利金や地代を払います。そうして生まれる「土地を借りる権利」を借地権といい、それ自体に財産としての値段がつきます。
では、親子でタダで貸し借りしたらどうなるのか。国税庁の通達は次のように決めています。
| 場面 | 通達の取扱い |
|---|---|
| 子が親の土地をタダで借りて家を建てた | 借りる権利の値段はゼロ。だから贈与税はかからない |
| 子が固定資産税くらいの額を親に払っている | 「公租公課(固定資産税など)に相当する金額以下」なら、使用貸借のまま |
| 権利金などを払っている | 使用貸借には当たらない |
| 親が亡くなり、その土地を相続した | 土地は「自用のもの(だれにも貸していない)」として評価。上の建物が自宅でも貸家でも同じ |
| 土地の上の建物を相続・贈与で取得した | 建物は、自分で使っているか人に貸しているかの区分に応じて評価 |
3. 流れで見るとこうなります
4. かんたんシミュレーション
※以下は仮定を置いた概算です。実際の評価は土地の形や地域の借地権割合などで変わります。
仮定:親の土地の「貸していない状態での評価額(自用地としての価額)」が5,000万円。その地域の借地権割合(路線価図に記号で示されています)を仮に60%とします。
相続のときは「自用地としての価額」そのまま。
5,000万円 −(5,000万円 × 60% = 3,000万円)= 2,000万円(財産評価基本通達25の計算方法)
つまり、タダで貸している土地は、相続のときに「貸しているから安くなる」ということがありません。そのかわり、家を建てたときに子どもに贈与税がかかることもありません。良い面と注意点の両方があると覚えておきましょう。
5. 見落としやすいポイント:地代をやめたとき
通達には、次のような場面のルールもあります。
例:親が地主に地代を払って土地を借り、家を建てていた(親が借地権を持っている)。その後、子が地主からその土地(底地)を買い取り、親子のあいだでは地代のやりとりをやめた。
→ この場合、土地を取得した子は、借地権を持っていた親から借地権の贈与を受けたものとして扱われます。
→ ただし、「使用貸借に切り替えたのではない(借地権はそのまま)」という申出書を、借地権者と連名で、土地を取得した人の住所地の税務署長に出せば、贈与とはされません。
6. 今できる対策・確認
- ✅ 親の土地に子が家を建てている場合、権利金や地代を払っていないか、払っている額が固定資産税などの額を超えていないかを確認しましょう。
- ✅ 相続税の試算では、その土地を「貸していない土地」として計算しておきましょう。貸宅地としての減額を見込むと、税額を少なく見積もってしまいます。
- ✅ 借地の地代をやめる・底地を買い取るといった予定があるときは、実行する前に税理士に相談し、申出書の提出が必要かを確認しましょう。
- ✅ 借地権を持っている家族から、さらにタダで土地を借りて建物を建てる場合も、通達で取扱いが決められています。三者(借りる人・借地権者・地主)で確認書を作る場合があります。
7. 出典(国税庁)
- 使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(法令解釈通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/731101/01.htm - 同通達の一部改正について(令和8年8月31日 課資2-14)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/sochiho/kaisei/260831/01.htm - 財産評価基本通達25(貸宅地の評価)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/05.htm
この記事は一般的なしくみを説明したもので、個別の案件の結論を示すものではありません。実際の判断は、契約内容や事実関係を確認したうえで税理士にご相談ください。