生前贈与の「持ち戻し」が3年から7年へ|令和9年から始まる相続税のルール変更をやさしく解説

生前贈与の「持ち戻し」が3年から7年へ
令和9年の相続から少しずつ長くなります

この記事は、すでに法律で決まっているルールの説明です(検討中の話ではありません)。令和8年10月14日時点で国税庁などが公表している情報をもとに、やさしく書いています。

まず結論から

亡くなる前にもらった贈与は、相続税の計算に「足し戻す」ルールがあります。

この足し戻す期間が、これまでの3年から、最終的に7年へ長くなります。

延び始めるのは、令和9年1月1日以後に始まる相続からです。

目次

1 「持ち戻し」って何?

たとえば、亡くなる直前に子どもへお金を贈ると、相続税が安くなりそうに見えます。そこで、一定の期間内にもらった贈与は、相続税の計算にもう一度足し戻します。これを一般に「生前贈与加算(持ち戻し)」と呼びます。

足し戻される対象は、「相続や遺贈で財産を取得した人」が、亡くなった人から暦年課税(毎年1月1日から12月31日までの贈与に税金をかける方法)でもらった財産です。年110万円以下の贈与でも、足し戻しの対象になります(国税庁タックスアンサー No.4161)。

2 足し戻す期間は、こう変わります

足し戻す期間は、亡くなった日(相続が始まった日)によって決まります。

相続が始まった日 足し戻される贈与の期間
令和8年12月31日まで 亡くなる前の3年間
令和9年1月1日〜令和12年12月31日 令和6年1月1日から亡くなる日まで
令和13年1月1日以後 亡くなる前の7年間

※国税庁タックスアンサー No.4161(令和8年4月1日現在の法令等)の記載にもとづきます。令和5年12月31日以前の贈与は、7年の期間に入っていても足し戻されません(国税庁「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」)。

図で見ると(亡くなる日から過去へ)

いま(令和8年まで)
3年(全額を足し戻す)
令和13年1月1日以後の相続
直近3年(全額)
その前の4年(合計100万円まで除く)

延びた4年分については、贈与された財産の価額の合計額から100万円を引いた残りが足し戻されます(相続税法第19条第1項)。

3 もう一つの方法「相続時精算課税」とは

贈与の受け方には、暦年課税のほかに「相続時精算課税」という方法があります。令和6年1月1日以後の贈与では、毎年110万円の基礎控除があり、この110万円までの贈与は、亡くなったときの足し戻しにも入りません(国税庁「相続時精算課税制度のあらまし」)。

くらべる点 暦年課税 相続時精算課税
毎年の基礎控除 110万円 110万円(暦年の控除とは別)
そのほかの控除 なし 累計2,500万円の特別控除。超えた分は一律20%
亡くなったときの足し戻し 期間内の贈与を足し戻す(110万円以下も対象) 贈与時の価額から基礎控除110万円を引いた残りを足し戻す
選んだあと 毎年の贈与に使える 一度選ぶと撤回できない。特別控除は期限内の申告が必要

※国税庁タックスアンサー No.4409、「相続時精算課税制度のあらまし」にもとづきます。贈与する人は60歳以上の父母・祖父母など、受け取る人は18歳以上の子・孫などの条件があります。

4 かんたんシミュレーション(概算)

【仮定】

親が、相続人である子に、毎年110万円ずつ贈与してきた。相続は令和13年1月1日以後に始まり、その前の7年間に毎年110万円ずつ(合計770万円)の贈与があった。ほかの贈与や特例は考えない。

暦年課税のまま贈与していた場合

直近3年分(110万円×3年) 330万円(全額を足し戻す)
その前の4年分(110万円×4年=440万円) 440万円−100万円=340万円
相続税の計算に足し戻される額 330万円+340万円=670万円

仮に、子の相続税にかかる税率が20%だとすると、670万円×20%=約134万円が、税金を増やす方向に働きます(概算)。実際の税額は、財産の総額や人数などで変わります。

相続時精算課税を選んで、毎年110万円ずつ贈与していた場合

毎年の贈与額110万円から基礎控除110万円を引くと0円です。足し戻しされる額も、贈与時の価額から基礎控除を引いた残りなので、この仮定では0円になります。

足し戻される額(仮定の場合)
暦年課税 670万円

相続時精算課税 0円

注意:これは、仮定を置いた概算です。精算課税は、一度選ぶと暦年課税に戻れません。また、精算課税を選んだ相手からの贈与には、暦年課税の基礎控除110万円は使えません(国税庁「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」)。どちらが得かは、家族の状況で変わります。

5 今できる対策

  • 贈与の記録を整理しましょう。いつ、誰に、いくら贈ったかを一覧にしておくと、足し戻しの計算がスムーズです。
  • 贈与する人の年齢や健康状態をふまえ、相続が始まりそうな時期が、上の表のどの区分に入るかを確認しましょう。
  • 相続時精算課税を選ぶ場合は、届出と申告が必要で、撤回できないことを理解したうえで決めましょう。
  • 贈与は、相続税の計算だけでなく、家族の話し合いや、財産の使い道とあわせて考えることが大切です。

出典(国税庁・e-Gov法令検索)

※この記事は一般的な情報をまとめたものです。個別のケースの税額や有利・不利は、家族構成や財産の内容で変わります。実際の判断は、必ず税理士にご相談ください。

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この記事を書いた人

兵庫県宝塚市の税理士。相続税・贈与税申告、不動産の法人化、非上場株式の評価、事業承継を専門とし、不動産オーナーおよび中堅企業のご支援にあたっています。担当者が代わることなく、税理士本人が最初から最後まで対応します。書面添付制度にも対応。

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