住宅取得等資金の贈与税の非課税|令和8年12月31日までの贈与が対象

子や孫が家を建てたり買ったりするとき、親や祖父母が資金を出すと、ふつうは贈与税がかかる場合があります。ただし、一定の条件を満たすと、決まった金額まで贈与税がかからない制度があります。この記事では、その制度(正式には「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」)を、順番に整理します。

考え方のステップ(まず4つだけ確認します)

  1. 誰から誰へ? 親・祖父母など(直系尊属)から、子・孫など(直系卑属)へ
  2. いくらまで? 家の性能によって、1,000万円まで、または500万円まで
  3. 何に使う? 家の新築・購入・増改築の代金(敷地の取得を含む)
  4. いつまで? 贈与は令和8年12月31日まで。家の取得などは、贈与の翌年3月15日まで

この記事の時点について
令和8年10月9日時点で国税庁が公表している情報と、租税特別措置法第70条の2に基づいて書いています。この制度は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間の贈与が対象です。

目次

1. この制度でできること

贈与を受けた金額のうち、決まった額までは、贈与税の計算のもとになる金額に入れなくてよい、という制度です。たとえば、親が子に家の購入資金を渡したとき、非課税の範囲内であれば、贈与税はかかりません。

ただし、何もしなくても自動的に使えるわけではありません。贈与税の申告をして、この特例を使うと届け出ることが必要です(詳しくは「6. 申告が必要です」で説明します)。

2. 非課税になる金額

家の種類 非課税の限度額(1人あたり)
省エネ等住宅(一定の性能がある家) 1,000万円
それ以外の住宅 500万円
  • 限度額はもらう人1人あたりです。父と祖父の両方から贈与を受けても、それぞれ1,000万円ではなく、合計で1,000万円までです。
  • すでにこの特例で非課税になった金額がある場合は、その分を引いた残りが限度額になります(一定の場合を除きます)。
  • 非課税の範囲を超えた部分には、通常どおり贈与税がかかります。暦年課税を選ぶなら、年110万円の基礎控除を使えます。

計算の例

省エネ等住宅を買うために、父から1,200万円の贈与を受けた場合(暦年課税で、この年はほかに贈与がないと仮定します)。

  • 1,200万円 − 非課税1,000万円 = 200万円
  • 200万円 − 基礎控除110万円 = 90万円
  • 90万円に、直系尊属から18歳以上の人への贈与に使う税率(この金額帯では10%)をかけて、贈与税は9万円になります。

※ 例を分かりやすくするための簡単な計算です。実際の税額は、ほかの贈与や選ぶ課税方法で変わります。

3. 使える人(もらう人の条件)

次のすべてに当てはまる人が対象です。

  1. 贈与を受けた時に、贈与した人の直系卑属(子・孫など)であること
  2. 贈与を受けた年の1月1日に、18歳以上であること
  3. 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(家の床面積が40㎡以上50㎡未満のときは、1,000万円以下)
  4. 平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で、この特例の旧制度を使っていないこと(一定の場合を除きます)
  5. 配偶者や親族など、一定の特別な関係がある人から家を買ったり、その人と工事の契約をしたりしたものではないこと
  6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、資金の全額を使って家の新築などをすること(その家を所有する人になることが必要です。共有持分でも構いません)
  7. 贈与を受けた時に、日本国内に住所があること(外国に住んでいる場合などは、一定の場合に限り対象になることがあります)
  8. 翌年3月15日までにその家に住むこと、またはその後すぐに住む見込みであること

注意:配偶者の親は「直系尊属」ではありません。夫の父や妻の母から資金をもらった場合は、原則としてこの特例の対象外です。ただし、養子縁組をしている場合は直系尊属にあたります。

4. 使える家と、使えるお金

家の条件

  • 日本国内にある家であること
  • 登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上を、もらった人が住むために使うこと(マンションは専有部分の面積)
  • 中古住宅は、次のどれかに当てはまること
    • 昭和57年1月1日以後に建築された家
    • 地震に対する安全性の基準に合うことを、書類で証明できる家
    • 耐震改修をする申請をして、翌年3月15日までに基準に合わせた家
  • 増改築は、工事費が100万円以上で、その2分の1以上が、自分が住む部分の工事であること

「省エネ等住宅」とは

1,000万円の枠を使える家です。家の種類ごとに、次の基準のうちどれか1つに当てはまり、住宅性能証明書などの書類で証明されたものが対象になります。

家の種類 基準(どれか1つ)
新築、または建築後使われたことのない家 ・断熱等性能等級5以上、かつ一次エネルギー消費量等級6以上
・耐震等級2以上(または免震建築物)
・高齢者等配慮対策等級3以上
中古住宅 ・断熱等性能等級4以上、または一次エネルギー消費量等級4以上
・耐震等級2以上(または免震建築物)、高齢者等配慮対策等級3以上のどちらかでも可

※ 基準の細かい条件や、経過的な取扱い(令和5年12月31日までに建築確認を受けた家など)があります。証明書の発行は国土交通省の所管で、家を建てる会社や登録機関に確認してください。

使えるお金・使えないお金

対象になるお金 対象にならないもの
・家の新築、購入の代金
・家と一緒に取得する敷地(土地)の代金
・増改築の工事費
・不動産そのものの贈与(お金ではなく家や土地をもらう場合)
・今住んでいる家の住宅ローンの返済
・車の購入や生活費など、家以外の使いみち

5. 期限とスケジュール

令和8年(2026年)に贈与を受ける場合の流れです。

何を いつまで
資金の贈与を受ける 令和8年12月31日(この制度の対象となる贈与の末日)
贈与税の申告書を出す 令和9年2月1日から3月15日まで
資金の全額を使って家の新築・取得などをする 令和9年3月15日まで
その家に住む 令和9年3月15日まで(または、その後すぐに住む見込みであること)。遅くとも令和9年12月31日までに住んでいないと、原則として特例を受けられず、修正申告が必要です

※ 申告期限の3月15日が土曜日・日曜日・祝日にあたる場合は、その翌日が期限になります。災害でやむを得ない事情があった場合には、期限が延びる措置もあります。

マンションや建売住宅の場合:「取得」にあたるため、翌年3月15日までに引渡しを受けていることが必要です。契約や頭金の支払いだけが済んでいても、引渡しが間に合わないと、特例を受けられません。

6. 申告が必要です

この特例は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に、特例を使うと書いた贈与税の申告書を、住所地を管轄する税務署に出して初めて受けられます。贈与を受けた金額が非課税の範囲内で、税額が0円になる場合でも、申告は必要です。

申告書には、戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど、一定の書類を添えます。省エネ等住宅の枠を使うときは、住宅性能証明書などの書類も必要です。土地・建物の登記事項証明書は、申告書に不動産番号を書くことで、添付を省略できます。

7. つまずきやすい点

  • 土地だけを買う場合:土地の取得にも使えますが、その上の家を、もらった人が所有する(共有持分でも可)ことにならないと、特例は使えません。たとえば、土地は自分、家は配偶者の名義にした場合は、注意が必要です。
  • 住宅ローン控除との関係:この特例を使い、さらに所得税の住宅ローン控除も使う場合、住宅ローンの年末残高が「家の取得の対価から、非課税とした額を引いた額」を超えると、その超える部分は住宅ローン控除の対象になりません。
  • 相続時精算課税との関係:住宅取得等資金の贈与では、贈与する人が60歳未満でも、相続時精算課税を選べる特例があります(こちらも令和8年12月31日までの贈与が対象です)。ただし、いったん相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの以後の贈与は、財産の種類にかかわらずすべて相続時精算課税になります。いったん選ぶと、暦年課税には戻れないため、選ぶ前によく確認してください。
  • 贈与の時期と使う時期:贈与が令和8年12月31日までに行われたかどうかは、お金を受け取った日で考えます。1日でも遅れると、この制度の対象になりません。

8. 相続との関係

贈与した人が亡くなった場合、この特例で非課税となり、贈与税の課税価格に入らなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要はないと、国税庁が示しています。

一方、相続時精算課税を使った部分は、基礎控除後の金額が、贈与者が亡くなったときの相続税の課税価格に加算されます。どちらの方法を選ぶかで、将来の相続税の計算が変わるため、贈与だけでなく相続も見すえて考えることが大切です。

非課税枠を超える部分の贈与や、ほかの贈与との関係など、個別の事情で結論が変わる点は、この記事では説明しきれません。贈与の前に、税理士や税務署にご相談ください。

9. まとめ

  • 親や祖父母から家の資金をもらうとき、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで、贈与税が非課税になる制度があります。
  • この制度は、令和8年12月31日までの贈与が対象です。
  • 贈与の翌年3月15日までに家を取得(マンションや建売は引渡しも)し、住むことが必要です。
  • 税額が0円でも、翌年2月1日から3月15日の間に、贈与税の申告が必要です。
  • 配偶者の親は対象外、複数の贈与者は合計で限度額まで、といった点が、つまずきやすいところです。

贈与や相続のご相談について

住宅資金の贈与は、将来の相続税とあわせて考えることが大切です。相続や自社株、事業承継については相続・自社株のページ、料金は料金表をご覧ください。ご相談はお問い合わせフォームからお受けしています。

参考にした資料

この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案への助言ではありません。実際の判断は、個々の事情や最新の法令等をご確認のうえ、行ってください。(令和8年10月9日時点の情報に基づきます)

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この記事を書いた人

兵庫県宝塚市の税理士。相続税・贈与税申告、不動産の法人化、非上場株式の評価、事業承継を専門とし、不動産オーナーおよび中堅企業のご支援にあたっています。担当者が代わることなく、税理士本人が最初から最後まで対応します。書面添付制度にも対応。

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