自社株の評価方法をわかりやすく|非上場株式(取引相場のない株式)の値段が決まる「4つの分かれ道」

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自社株の評価方法をわかりやすく|非上場株式の値段が決まる「4つの分かれ道」

「うちの会社の株、相続や贈与のときはいくらになるのか」。中小企業の社長から、よくいただく質問です。上場していない会社の株(税務では「取引相場のない株式」と呼びます)には、市場の値段がありません。そこで国税庁のルール(財産評価基本通達)に沿って、値段を計算します。

ややこしく見えますが、計算の方法は「4つの分かれ道」を順にたどると決まります。この記事では、その道すじを図でたどります。あわせて、2026年4月から国税庁で始まった評価方法の見直しの議論にもふれます。

この記事の要点

・評価方法は「誰が受け取るか」「会社の中身」「会社の大きさ」で決まります。

・同じ会社でも、計算方法によって評価額が何倍も違うことがあります。

・現在のルールは見直しの議論中です。ただし、内容と時期は決まっていません(令和8年10月30日時点)。今の相続・贈与は今のルールで評価します。

目次

なぜ「自社株はいくら?」の答えが人によって違うのか

上場会社の株なら、その日の株価を見れば値段がわかります。ところが中小企業の株は、ほとんど売り買いされません。たとえるなら、値札のついていない品物です。値札がないので、「似た上場会社の株価と比べる」「会社の財産を数える」「受け取れる配当から逆算する」といった方法で、値段を見積もることになります。

どの見積もり方を使うかは、国税庁の通達で細かく決まっています。そして見積もり方が違えば、結果も大きく変わります。「去年は1株○円と言われたのに、今年は全然違う」「隣の会社の社長と話が合わない」ということが起きるのは、このためです。

評価方法が決まる「4つの分かれ道」

国税庁のタックスアンサー(No.4638)と財産評価基本通達178・179をもとに、判定の順番を1枚にまとめました。

図1 評価方法の分かれ道(現行ルール)

分かれ道① 株を受け取る人は、会社の経営に影響力のある「同族株主等」か?

いいえ(配当を受け取るだけの少数株主など)→ 配当還元方式(特例的な評価方式)

▼ はい

分かれ道② 会社の中身が「特定の評価会社」にあたるか?

はい(土地や株式に資産が偏っている、開業3年未満 など)→ 原則純資産価額方式

▼ いいえ(一般の会社)

分かれ道③ 会社の大きさは?(大会社・中会社・小会社)

従業員数・総資産(帳簿の金額)・1年間の取引金額で判定(図2)

▼

分かれ道④ 大きさに応じて、2つの計算方法を「配合」する(図3)

大会社は類似業種比準方式が中心、小会社は純資産価額方式が中心

出典:国税庁タックスアンサーNo.4638、財産評価基本通達178・179をもとに当事務所作成。細かな例外は省略しています。

2つの計算方法を、身近な例えで

類似業種比準方式

似た業種の上場会社の株価を基準に、自社の「配当」「利益」「純資産(帳簿の金額)」の3つを比べて計算します。「同じ業界の上場会社と成績表を見比べて値付けする」イメージです。

純資産価額方式

会社の財産を相続税の評価額に置き直し、借金などを引いて計算します。「会社の財産を今の値段で数え直し、借金を引いた残り」のイメージです。土地を多く持つ会社ほど影響を受けます。

図2 会社の大きさの判定基準(財産評価基本通達178)

区分 業種 総資産(帳簿価額) 1年間の取引金額
大会社
従業員70人以上は無条件で大会社
卸売業 20億円以上(従業員35人以下を除く) 30億円以上
小売・サービス業 15億円以上(同上) 20億円以上
上記以外 15億円以上(同上) 15億円以上
中会社 卸売業 7,000万円以上(従業員5人以下を除く) 2億円以上30億円未満
小売・サービス業 4,000万円以上(同上) 6,000万円以上20億円未満
上記以外 5,000万円以上(同上) 8,000万円以上15億円未満
小会社 大会社にも中会社にもあたらない会社(従業員70人未満で、総資産・取引金額の両方が中会社の基準に届かない会社)

読み方:大会社・中会社は、総資産の基準と取引金額の基準の「どちらか」を満たせば該当します。数字はいずれも直前期末(相続・贈与の直前に終わった決算)のものを使います。

ここで大事なのは、従業員の数え方です。社長や一定の役員は数に入れません。週30時間未満のパートさんは、1人ではなく「労働時間÷1,800時間」で数えます。数え方ひとつで会社の区分が変わることがあるので、実務では名簿を1人ずつ確認します。

図3 会社の大きさごとの「配合」(財産評価基本通達179)

大会社

中会社(大)

中会社(中)

中会社(小)

小会社

類似業種比準方式 純資産価額方式

中会社の配合割合(Lの割合)は0.90・0.75・0.60の3段階です。どの会社も、純資産価額方式だけで評価する方法を選べます。小会社は、類似業種比準方式を半分(0.50)まぜる方法も選べます。

つまり、会社が大きいほど「上場会社と比べる方法」の比重が高くなり、小さいほど「財産を数え直す方法」の比重が高くなります。国税庁の有識者会議の資料では、その理由を次のように説明しています。大会社は上場会社の株式の評価と、小会社は個人事業者の財産評価とつり合いをとるのが合理的だから、というものです。

自社の評価方法を知るための6つのチェック

税理士に相談する前に、次の6点を手元の資料で確認しておくと、話が早く進みます。

□ 1. 株を受け取る予定の人は誰か 後継者か、親族か、役員・従業員か。分かれ道①で方式が変わります。

□ 2. 会社の財産の中身 土地や他社の株式が財産の大半を占めていないか。不動産を多く持つ会社は特に要注意です(分かれ道②)。

□ 3. 開業からの年数・営業の状態 開業3年未満の会社、休業中の会社は扱いが変わります。

□ 4. 直前期末の従業員数 70人を超えているか。パート・役員の数え方も確認します。

□ 5. 業種・総資産・年間の取引金額 卸売・小売サービス・それ以外のどれか。決算書と申告書で確認します。

□ 6. 直近2期の「配当・利益・純資産」 ゼロの項目が多いと、類似業種比準方式が使えなくなる場合があります。

実務で気づくこと:同じ会社でも評価額は「何倍も」違う

当事務所が関与した大会社の例では、類似業種比準方式で計算した株価と、純資産価額方式で計算した株価に約6倍の差がありました。長年利益を積み上げてきた会社や、昔に安く買った土地を持つ会社では、「財産を数え直す方法」の評価額が大きくなりやすいためです。

この差があるので、図2の会社区分が1段階変わるだけで、評価額が大きく動きます。会計検査院も令和6年11月の検査報告で、この点を指摘しました。規模の大きな会社ほど評価額が相対的に低く算定されるという内容で、今回の見直し議論のきっかけになっています。

もう一つの気づきは、評価額は「相続・贈与の直前に終わった決算」の数字で決まることです。決算が1期進むだけで、利益や純資産が変わり、株価も変わります。たとえば役員退職金を払った期は、利益が一時的に下がるので類似業種比準方式の評価額が下がる、といった動きが生じます。ただし見直しの議論では、こうした一時的な損益を除いて評価する方向が示されています。株価を下げる対策と、その注意点は別の記事で詳しく扱います。

こんな進め方は、おすすめしません

× 出資したときの金額や、昔の売買価格のまま親族に株を譲る

税務上の評価額と大きくずれていると、差額について贈与税などの問題が生じるおそれがあります。

× 「見直しで上がる前に」と、評価を確かめずに急いで贈与する

見直しの中身も時期も決まっていません。まず今のルールで評価額を出し、後継者や納税資金の準備と合わせて判断する必要があります。

× 評価額を下げることだけを目的に、会社の形や株主構成を組み替える

通達には「この通達どおりに評価することが著しく不適当な場合は、別の方法で評価する」という定め(総則6項)があります。見直しの議論でも、評価額を圧縮するスキームへの対応が大きなテーマです。

【見直しの動き】国税庁の有識者会議で何が話されているか

国税庁は令和8年4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開いています。8月20日の第5回会議では、国税庁が考える見直しの方向性が資料で示されました。その後も議論は続いています。

図4 現行ルールと、議論されている方向性(第5回資料より)

現行ルール

・会社の大きさで方式の配合を変える

・類似業種比準方式と純資産価額方式が中心

・少数株主は配当還元方式(還元率10%)

議論されている方向性(案)

・会社の大きさによる区分をやめ、共通の方式にする

・帳簿上の純資産に、数年分の「通常を超える利益」を加える方式(残余利益方式)を検討

・純資産価額方式は「特定の評価会社」向けに位置づけ直す

・配当還元方式は対象を整理したうえで残す

出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」(令和8年8月20日)をもとに当事務所が要約。いずれも検討段階の案で、確定したものではありません。

ここで押さえておきたいのは、今の時点で決まっていることは何もないという点です。新しいルールがいつから、どの相続・贈与に使われるのかも公表されていません。当事務所では、国税庁の公表資料を確認し次第、この記事を更新します。

自社株評価の進め方(4ステップ)

ステップ1 資料をそろえる
決算書と法人税申告書(3期分程度)、株主名簿、従業員名簿、固定資産(特に土地)の一覧を用意します。

ステップ2 4つの分かれ道を判定する
誰が受け取るか、特定の評価会社か、会社の大きさはどうか。ここで評価方法が決まります。

ステップ3 今のルールで評価額を出す
直前期の数字で評価額を計算し、可能なら翌期以降の見込みも試算します。決算が進むと数字が変わるためです。

ステップ4 承継の計画に落とし込む
誰に・いつ・どの方法(贈与・相続・譲渡)で渡すか。納税資金や、見直しの動きも踏まえて計画を立てます。

まとめ

非上場株式の評価方法は、「誰が受け取るか」「会社の中身」「会社の大きさ」「方式の配合」という4つの分かれ道で決まります。同じ会社でも方式によって評価額は何倍も変わるので、まず自社がどの道を通るのかを知ることが出発点です。評価方法の見直しが議論されている今こそ、現在の評価額を一度確かめておくと、落ち着いて次の手を考えられます。

自社株の評価額、一度確かめてみませんか

決算書と申告書をご用意いただければ、評価方法の判定から試算までお手伝いします。事業承継や相続の計画とあわせてご相談ください。

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この記事を書いた人

税理士 松本 裕志

松本裕志税理士事務所(兵庫県宝塚市)代表。年商1億円から50億円規模の法人、相続・事業承継、不動産の法人化を主な業務としています。

出典(官公庁の公式資料)

・国税庁 タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm

・国税庁 財産評価基本通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)・179(取引相場のない株式の評価の原則)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/02.htm

・国税庁「『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』の開催について」(令和8年4月16日)
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/pdf/kaisai_kabukaigi.pdf

・国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」(令和8年4月20日)
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260420/pdf/01shiryo_kabukaigi.pdf

・国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」(令和8年8月20日)
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260820/pdf/05shiryo_kabukaigi.pdf

※本記事は令和8年10月30日時点で国税庁の公表内容を確認して作成した一般的な解説で、個別のご事情に対する税務上の判断ではありません。事例は守秘義務に配慮して抽象化しています。評価方法の見直しは検討段階のため、今後内容が変わる可能性があります。

松本裕志税理士事務所

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この記事を書いた人

兵庫県宝塚市の税理士。相続税・贈与税申告、不動産の法人化、非上場株式の評価、事業承継を専門とし、不動産オーナーおよび中堅企業のご支援にあたっています。担当者が代わることなく、税理士本人が最初から最後まで対応します。書面添付制度にも対応。

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