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厚生労働省は、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的とした「イクメンプロジェクト」を発足しましたが、男性の育児休業取得率は、平成29年度では5.14%となっており、依然として低い水準です。
育児休業を取得すれば、原則として育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険料)が免除されることとなります。
社会保険料は、月単位で日割り計算しません。よって、育児休業を1日でも取得すれば、取得をした月の社会保険料が全額免除されることとなります。
なお、育児休業を取得した月が、賞与の支給月であれば賞与に係る社会保険料も免除されます。
社会保険料が免除されることにより、給料の手取り額が増加することになります。
また、育児休業を取得する従業員だけでなく、会社負担分も免除となります。そのため、会社にとっても育児休業を従業員に取得してもらうことでキャッシュアウトが減少します。
では、どのように取得をすれば社会保険料が免除され、手取り額が増加するか確認していきましょう。
育児休業とは、1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまでの子どもを養育する義務のある労働者が、法律に基づいて取得することができる休業のことで、仕事と育児の両立を図ることを目的としても設立されました。
さらに両親が協力して育児休業を取得できるよう「パパ休暇(出産後8週間以内に取得した場合の再取得の特例)」や「パパ・ママ育休プラス(父母共に育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月に達するまでの1年間)」などの特例も設けられています。
厚生労働省:育児・介護休業法について
事業主の方が年金事務所又は健康保険組合に申出することによって、育児休業等(育児休業又は育児休業の制度に準ずる措置による休業)をしている間の社会保険料(健康保険・厚生年金保険料)が、被保険者本人負担分及び事業主負担分ともに免除させる制度です。
育児休業等を開始した日が含まれる月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間(ただし、子が3歳に達するまで)
※ 社会保険料の免除を受けても、健康保険の給付は通常どおり受けられます。また、免除された期間分も将来の年金額に反映されます。
※ 賞与・期末手当等にかかる保険料についても免除されます。
※ 厚生年金基金においては、事業主から申し出があった場合、代行部分に対する掛金が免除されます。加算部分の掛金についての負担をどうするかは、それぞれの基金が規約で定めることとなっています。
事業主の方が、「健康保険・厚生年金育児休業等取得者申出書」を年金事務所又は健康保険組合に提出します。
また、厚生年金基金においても、事業主の方が掛金免除の申出書を基金に提出することになっています。
では、実際にどの程度手取り額が増えるのか検証してみましょう。
【前提条件】
年齢:35歳
育児休業の取得日:令和2年8月31日
給与支給額:30万円
標準報酬月額:30万円
賞与支給額:70万円
※個人住民税は便宜上なしとします。
社会保険料が免除となる期間は、育児休業等を開始した日が含まれる月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月までです。
社会保険料は月単位で計算されるため、育児休業の取得が1日であっても免除期間に該当するのであれば、免除期間は全額免除されます。
では、社会保険料が免除されるために1日だけ育児休業取得するには、いつ取得すればいいのでしょうか?
答えは、月末に育児休業を取得した場合のみ社会保険料が免除となります。
上記の免除期間に当てはめますと、育児休業等を開始した日(8月31日)が含まれる月(8月)から終了した日の翌日(9月1日)が含まれる月の前月(8月)までとなります。よって、8月分の社会保険料は免除されます。
もし、8月15日に1日だけ育児休業を取得した場合は、育児休業等を開始した日(8月15日)が含まれる月(8月)から終了した日の翌日(8月16日)が含まれる月の前月(7月)までとなります。開始をした日が含まれる月(8月)よりも終了した月(7月)が逆転することになるため、月末以外に取得したときは社会保険料は免除されません。
※月末が公休日(一般的には、土・日・祝日)の場合は、労働義務がないため育児休業を取得することが出来ません。この場合は、直前の営業日となります。
月末に1日だけ育児休業を取得した場合は、社会保険料が免除されます。実際にどの程度手取り額が増加するのか検証してみましょう。
・通常の場合
1.給料
300,000円 - 42,780円(社会保険料) - 900円(雇用保険料) - 6,750円(源泉所得税 ) = 249,570円
2.賞与
700,000円 - 99,820円(社会保険料) - 2,100円(雇用保険料) - 36,638円(源泉所得税) = 561,442円
3.1と2の合計
249,570円 + 561,442円 = 811,012円
・社会保険料が免除となった場合
1.給料
300,000円 - 0円(社会保険料) - 900円(雇用保険料) - 8,420円(源泉所得税 ) = 290,680円
2.賞与
700,000円 - 0円(社会保険料) - 2,100円(雇用保険料) - 42,753円(源泉所得税) = 655,147円
3.1と2の合計
290,680円 + 655,147円 = 945,827円
通常の場合と社会保険料が免除となった場合では、手取り額が134,815円増加しました。賞与が支給される月の月末に育児休業を1日取得することでより手取り額が増加することになります。
月末に育児休業を1日取得することで社会保険料が免除され、給料などの手取り額が増加することができます。
しかし、私は、おすすめできません。なぜなら、育児休業は、労働者が子どもの養育のために休業できる「育児・介護休業法」に定められた制度です。
少子高齢化による労働人口の減少で、女性の労働力が必要され、そのためには女性が出産後も働きやすい環境を整えるだけでなく、男性の育児参加を促進することが育児休業の制度の趣旨です。
給料などの手取り額を増加させるためだけに育児休業を取得することは、制度趣旨に反するため、おすすめできませんね。
菜の花2021年4月12日 15:43 /
教えて下さい。 下記の場合、社会保険料免除は適用されますか? ●保育園入園が出来ず、子の一歳半まで育休延長。(2019/12生まれ→2021/6まで育休延長) ●今春4月に入園が決まり、4/30で育休終了とした。 ●夫が4/30に育休を1日取り、5/1復帰勤務とした場合、適用されますか? ポイントは、①4/30時点で、子は1歳4ヶ月であることと、②職場がシフト制で公休日は関係ないので5/1出勤に出来るが、本来は公休日であること。この2点が適用できるか否かのポイントかと思っております。 よろしくお願いします。