同族グループ内の経営指導料・管理料は「一式」の請求書だけで大丈夫?
令和8年度改正「関連者間取引の書類保存」
2026年10月9日 松本裕志税理士事務所
まず結論から
親会社や兄弟会社など「関連者」から経営指導やブランド使用などを受けて費用にしている会社は、請求書や契約書に内容が書かれていない部分を補う書類を、決算の申告期限までに用意して7年間保管するルールができました。令和8年4月1日以後に始まる事業年度の取引から対象です。すでに決まっている制度です。
1 どんなルール?(やさしく言うと)
会社が仲間内の会社(関連者)にお金を払うとき、外からは「何の対価なのか」が見えにくくなります。そこで、請求書などに書かれていない大事なことを、別の書類で補って残しておくことになりました。
| ① 取引する | ② 書類を見る | ③ 足りない所を補う | ④ 7年間保存 |
| 関連者から技術やブランドを借りる、経営指導などを受ける | 契約書・請求書・見積書などに必要なことが書いてあるか確認 | 書いていなければ「内容」「金額の決め方」などを書いた書類を申告期限までに作る | 本店など決められた場所に保管 |
2 あなたの会社は対象? チェックしてみましょう
対象になる会社
青色申告をしている会社(青色でない普通法人にも同じ特例があります)。関連者との取引で、費用になるものがある会社です。
「関連者」とは
たとえば、ある会社が別の会社の株式の50%以上を直接または間接に持っている関係です。同じ人(その人と特別な関係のある個人も含みます)が、2つの会社の株式をそれぞれ50%以上持っている関係も入ります。人事や取引・資金で実質的に方針を決められる関係も含まれます。
対象になる取引
関連者から受ける、①特許・ノウハウ・著作権などの譲渡や貸付け、②役務(サービス)の提供です。②には、費用を分け合う契約に基づく研究開発や広告宣伝、専用の資産の使用・管理、経営の管理や指導、情報の提供などが入ります。
要注意
請求書に「経営指導料 一式」とだけ書いてある場合、国税庁の運用方針では「一式」のような抽象的な書き方は、必要なことが書いてあるとは言えないとされています。
要注意
補う書類が必要になるのは、取引の書類に必要なことが書かれていないときです。電子取引でその情報を受け取った場合は、この特例は適用されません(別に電子データ保存のルールがあります)。
3 簡単なシミュレーション(仮定にもとづく例です)
※数字や設定はすべてわかりやすくするための仮定です。実際の会社の事情で変わります。
| 設定 | 3月決算のA社。親会社B社の株式の50%以上を、A社の社長一族が持っている(関連者の関係)。B社から経営指導を受け、月50万円(年600万円)を「経営指導料」として払っている。 |
| 請求書の記載 | 「経営指導料 一式 500,000円」だけ |
| 足りない所 | 指導の中身(会議への参加、財務の助言など)と、500,000円をどう決めたか(人の時間×単価、売上の何%など) |
| やること | 「指導の内容」「提供の方法・回数」「金額の計算方法」を書いた説明書を作り、請求書と一緒に保存する。 |
| 期限の目安 | その事業年度の申告書の提出期限まで。3月決算なら、決算日の2か月後(原則として5月末)が目安です。 |
| 保存期間 | 起算日から7年間 |
契約書の段階で「内容」と「金額の決め方」を書いておけば、あとから補う書類を作る手間が減ります。
4 今できる対策
- 関連者への支払いを一覧にする(経営指導料、管理料、ロイヤリティ、費用の分担金など)。
- 契約書と請求書を見て、「内容」と「金額の決め方」が書かれているか確認する。
- 「一式」だけの書類は、契約書の書き直しか、補う説明書の作成を決算前に進める。
- 保管する場所と担当者を決める。
- 12月決算の会社は、令和9年1月1日に始まる事業年度から対象になる点を、早めに確認しておく。
5 知っておきたい注意点
- 国税庁の運用方針では、この書類の保存は「費用として認められるための要件」ではないとされています。保存がないだけで、費用が認められなくなるわけではありません。
- ただし、書類がなく取引の実態を確かめられないと、調査で説明が難しくなります。青色申告の承認の取消しは、違反の程度を見て判断され、軽微なら改善指導にとどめることができるとされています。
- 繰越欠損金の控除を受けるための帳簿書類にも、この補う書類が含まれます。
- この記事は一般的な説明です。実際の取引が対象かどうかは、契約の内容で変わります。個別のご相談は税理士にお尋ねください。
出典(官公庁の公式情報)
- 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」6 その他主な改正項目(適用時期・保存期間)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2026/pdf/I.pdf - 法人税法施行規則 第59条の2(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040012 - 国税庁 事務運営指針「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて」(令和8年6月30日)
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/kaisei/260630_01/00.htm - 財務省「令和8年度税制改正の大綱」3 法人課税ほか
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm