事業承継税制は令和9年末で終わる? その先の制度は「検討中」です(2026年10月15日時点)

事業承継税制は令和9年末で終わる? その先の制度は「検討中」です

2026年10月15日時点で公表されている官公庁の資料にもとづく解説です|松本裕志税理士事務所

⚠ 先にお伝えしておくこと:「決まったこと」ではありません

この記事の後半に出てくる「その先の制度」は、経済産業省が出した「税制改正の要望」です。国が決めたルールではありません。いつから始まるのか(適用開始時期)も、今のところ決まっていません。要望の資料にも「適用期間は検討中」と書かれています。

まず結論から

① 今の「特例措置」は、令和9年(2027年)12月31日までの贈与・相続が対象です(条文に書いてあります)。

② 経済産業省は「期限のあとも、見直して強化した制度にしたい」と要望していますが、期間は「検討中」です。

③ だから「待つ」と決める前に、今の制度で動く場合のスケジュールを先に確かめておくのが安全です。

目次

1. 事業承継税制って、どんな制度?

会社の社長さんが、後継者に自社の株を渡すと、ふつうは多額の贈与税や相続税がかかります。この税金の支払いを、一定の条件を守るあいだ猶予(待ってもらう)してくれるのが「非上場株式等の納税猶予の特例(事業承継税制)」です。

平成30年(2018年)に始まった「特例措置」には、10年間という期限があります。そのため「期限が来たあと、どうなるの?」という質問が増えています。

2. 今のルール:確定している2つの期限

項目 期限(今のルール)
特例承継計画(会社が国に出す「承継の計画書」)の提出 平成30年4月1日から令和9年9月30日まで
特例を使える贈与・相続の期間 平成30年1月1日から令和9年12月31日まで

根拠:国税庁タックスアンサーNo.4148(令和8年4月1日現在の法令等)。贈与は租税特別措置法第70条の7の5第1項、相続は同法第70条の7の6第1項に「令和九年十二月三十一日まで」と書かれています。計画の提出期限は、令和8年度税制改正の大綱で「1年6月延長」とされた内容が反映されたものです。

ポイントは、計画の提出期限(9月30日)と、贈与・相続の期限(12月31日)が別だということです。2つの日付の間は約3か月しかありません。

3. その先は? 経済産業省の要望(検討段階)

※これは「要望」です。決まったことではなく、適用開始時期も未定です。

令和9年度の税制改正に向けて、経済産業省が出した要望の項目33に「事業承継税制の抜本見直し」があります。資料に書かれている内容は次のとおりです。

  • 平成30年に設けた特例は「10年間の時限的措置」で、その期限を迎えることを受けた要望である。
  • 事業承継をきっかけに「稼ぐ力」を高めようとする中小企業を後押しする措置へ、抜本的に見直し・強化する。
  • 適用期間の欄には「(特例措置)令和9年末まで。適用期間は検討中。」と書かれている。
  • 法人版の一般措置(特例ではないほう)は「期限の定めなし」と書かれている。

つまり、「新しい制度ができる」とも「同じ内容で延びる」とも、まだ決まっていません。どうなるかは、これから国で話し合われます(同じ要望の一覧には、項目5「早期事業再生法の施行に伴う事業承継税制の拡充」もあります)。

4. 図解:贈与の年ごとに見る「今の制度」

贈与する年 今の特例措置 ひとこと
令和8年(2026年) 使える期間内 残りは約2.5か月です。
令和9年(2027年) 使える期間内(最後の年) 計画の提出は9月30日まで。日付が2つあります。
令和10年(2028年)以後 今の条文では期間外 要望は出ているが、期間は「検討中」で未定です。

緑=条文で期間内と確認できるもの/黄=決まっていないもの。細かい使える条件(贈与の回数や会社の要件など)は条文・中小企業庁の案内で確認してください。

5. 簡単なシミュレーション:残り時間はどれくらい?

今日(2026年10月15日)から、2つの期限までの日数を数えてみます(カレンダーどおりの単純計算です)。

① 今日 → 計画の提出期限(2027年9月30日):350日(約11.5か月)

② 今日 → 贈与・相続の期限(2027年12月31日):442日(約14.5か月)

③ 【仮定】2026年12月31日に国の方針が分かったとして、そこから贈与・相続の期限まで:365日(12か月)

※③は「年末に方針が出る」と仮に置いた計算です。税制改正の方針が出る時期は、例年の流れから年末ごろになることが多いと言われますが、令和9年度分の日程は今回の確認では見つけられていません(推測です)。実際の日数は変わります。

見てのとおり、「方針が出てから動く」と、株の評価、計画づくり、贈与の手続き、都道府県への申請をすべて1年以内に済ませる計算になります。これは単純な日数の比べ方で、手続きにかかる期間は会社ごとに違います。

6. 今できる対策

  1. 誰に・いつ渡すかを話し合う。後継者と時期が決まっていないと、どの制度が合うかも決まりません。
  2. 自社株のだいたいの価値を知る。株の評価の方法は、国税庁の有識者会議で見直しが話し合われている最中です(こちらも決まっておらず、始まる時期も公表されていません)。まずは今のルールでの金額をつかんでおきましょう。
  3. 特例承継計画の準備を進める。提出期限は令和9年9月30日までです。
  4. 12月ごろの税制改正の議論を確認する。要望が形になるかどうかは、そこで見えてきます(推測です)。
  5. 顧問の税理士に早めに相談する。会社の要件や、贈与か相続かで手順が変わります。

7. 気をつけたいこと

  • 要望は「お願い」の段階です。決定ではないので、「延長される」と決めつけて動かないでください。
  • この記事は一般的な説明です。会社ごとの事情で答えが変わります。
  • 中小企業庁のサイトは今回確認できなかったため、手続きの細かい流れは中小企業庁や都道府県の案内で確かめてください。

出典(官公庁の公式ページ)

官公庁の公表資料をもとに作成した解説で、2026年10月15日時点の内容です。個別の税務判断は、必ず税理士にご相談ください。

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この記事を書いた人

兵庫県宝塚市の税理士。相続税・贈与税申告、不動産の法人化、非上場株式の評価、事業承継を専門とし、不動産オーナーおよび中堅企業のご支援にあたっています。担当者が代わることなく、税理士本人が最初から最後まで対応します。書面添付制度にも対応。

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