税務調査の前に帳簿データを出す?国税庁の新しい取組とQ&Aをやさしく解説

税務調査の前に「帳簿データ」を出す?
国税庁の新しい取組とQ&Aをやさしく解説

まず結論から

国税庁は、税務調査の前に、会計データなどの「電子データ」を出してほしいとお願いする取組を進めています。

目的は、調査にかかる時間や、会社が拘束される時間を短くすることです。

出したデータの扱い方は、国税庁のQ&Aに書かれています。慌てず、まず顧問税理士に相談してください。

目次

1. 何が起きているの?

税務調査というと、調査官が会社に来て、帳簿や書類を見るイメージがありますよね。国税庁は今、これを少しずつデジタルに変えようとしています。

国税庁のページには、次のように書かれています。調査の前にデータを出してもらうことで、これまで調査のあとに行っていた帳簿などの確認の一部を、先に税務署で行えるようになる。その結果、調査の効率化や、調査期間・拘束時間の短縮が期待される、という説明です。

また、電子データの取扱いについての説明は、令和8年7月以降に実施する税務調査から始まっています。なお、取組そのものの開始日は、国税庁のページには書かれていません。

2. 流れをつかもう

国税庁のページでは、依頼のタイミングは「原則として、実地の調査の事前通知のあと」とされています。日にちの調整に時間がかかるときは、事前通知より前にお願いすることもあります。

STEP1
調査の
事前通知
STEP2
データ提出
のお願い
STEP3
税務署が
事前に確認
STEP4
実地の調査
(時間短縮を期待)

※実地の調査を予定しない調査でも、データの提出をお願いすることがあります(国税庁Q&A 問3)。

データの出し方は2通り

  • 税務署のUSBメモリなどを使い、会社のパソコンからデータを受け取る方法
  • オンラインツール(メールなど)を使って、データを受け取る方法

(出典:国税庁の説明文書。USBメモリ等は暗号化などの対策をとり、保存の必要がなくなり次第すみやかに消去する、と書かれています。)

3. Q&Aで分かった、気になるポイント

国税庁は「帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A(令和8年10月版)」を公開しています。経営者さまが気になりそうな点を、やさしくまとめました。

気になること Q&Aの説明(要約)
どこまで出すの? 調査に必要な範囲に限って依頼する。納税者や税理士に対象の帳簿書類などを確認したうえで依頼し、範囲が無制限に指定されることはない(問4)。
応じなかったら? この取組は、納税者の理解と協力のもと、承諾を得て行うとされている。一方で、物件の提示・提出の要求には、正当な理由がなければ応じる必要がある、とも書かれている(問5・問6)。
データはいつまで残る? 課税処分の証拠として保存するものは、通常7年の保存期間を設定し、満了後に消去する(問10)。厳重に管理するとされている(問11)。
ほかの調査にも使われる? 税務調査で把握した情報は、ほかの税務調査や行政指導にも活用されることがある。ただし、守秘義務があり、情報の入手先などがほかの調査対象者に分からないよう注意するとされている(問12)。
オンライン面談は? Teamsなどのオンライン面談は、基本的に「実地の調査」にはあたらない。ただし、事業の現況確認が必要不可欠と判断した場合は、原則として実地の調査を行う(問13)。
書類を預けるときは? 提出された物件を税務署などで預かる「留置き」のときは、預り証が交付され、不要になれば遅滞なく返される(問16)。

※上の表は、Q&Aの内容をわかりやすい言葉に直した要約です。実際の対応は個別の事情で変わりますので、必ず原文(本記事の末尾にURLがあります)と顧問税理士にご確認ください。

⚠ 注意したいところ

Q&Aには「承諾を得て行う」という説明と、「正当な理由なく応じないと、罰則の対象となりうる」という説明の両方があります。どちらの場面にあたるかは状況によって変わります。依頼の連絡が来たら、自分だけで判断せず、先に顧問税理士へ連絡しましょう。

4. 簡単なシミュレーション(仮定の例です)

国税庁は「時間が短くなることが期待される」と説明していますが、具体的に何時間短くなるかは示していません。そこで、考え方のイメージをつかむために、次の仮定を置いて計算してみます。実際の調査とは異なります。

【仮定(国税庁の数字ではありません)】

・実地の調査は3日間、1日あたり6時間として合計18時間

・そのうち、帳簿の確認にあてていた時間が6時間

・帳簿の確認の一部(仮に半分の3時間)を、データの事前確認に移せたとする

調査で会社が付き合う時間のイメージ

いままで
18時間
事前確認あり
15時間(18時間 − 3時間)

この仮定どおりなら、3時間(約17%)短くなる計算です(3 ÷ 18 ≒ 0.167)。ただし、データの準備に会社側の手間もかかります。「短くなる」と決まっているわけではなく、会社ごとに結果は変わります。

5. 今できる対策

① 会計データをすぐ出せるようにしておく
会計ソフトからデータを書き出せるか、担当者が操作を分かっているかを確認しましょう。
② 保存場所を整理する
帳簿や請求書のデータが、パソコンのあちこちに散らばっていないか見直しましょう。
③ 連絡が来たら、まず顧問税理士に相談する
Q&Aでも、範囲の確認は納税者や税理士に対して行うとされています(問4)。
④ 出す前に「範囲」と「期間」を確認する
調査に必要な範囲に限る、とされています。何をどこまで出すのか、はっきりさせてから対応しましょう。

6. 出典(国税庁の公式ページ)

※本記事は、2026年10月17日時点で国税庁が公表している情報をもとに、作成した解説です。個別の事案への適用は、事実関係によって異なります。実際の対応は、顧問税理士にご相談ください。

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この記事を書いた人

兵庫県宝塚市の税理士。相続税・贈与税申告、不動産の法人化、非上場株式の評価、事業承継を専門とし、不動産オーナーおよび中堅企業のご支援にあたっています。担当者が代わることなく、税理士本人が最初から最後まで対応します。書面添付制度にも対応。

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